大阪高等裁判所 昭和58年(ネ)860号 判決
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【説明】
本件事案の概要は、X(被控訴人)はY(控訴人)から数回にわたり計一四〇五万円を借受け、右債務を担保するため、昭和五四年一二月二〇日X所有の本件不動産につき代物弁済予約及び極度額を一六〇〇万円とする根抵当権設定契約を締結し、これを原因とする各仮登記(右根抵当権設定については後に本登記も)を経由した。Yは、そのころXから本件不動産の登記済権利証や登記の必要書類を預つたが、昭和五六年二月二三日、右書類を利用して、本件不動産についての代物弁済上の地位をYが代表取締役をしその個人的会社であるAに譲渡してその仮登記を移転し、かつ代物弁済を原因としてAのため所有権移転の本登記を経由した。その後同年三月一三日、Xに到達したAからの書面で、予約完結権の行使を理由に右本登記を経由した旨及び本件不動産の代物弁済評価額は後日連絡する旨の通知がなされ、次いでYは同年六月一五日の本件原審口頭弁論期日に本件不動産の清算金は存しない旨陳述した。他方Xは当初これを争い右登記の抹消登記手続を訴求していたが、昭和五七年九月二日の本件原審口頭弁論期日において、本件不動産の所有権が昭和五六年二月二三日に代物弁済によりY(ただし登記名義上はA)に移転したことを認める旨の陳述をした。なお本判決は、本件代物弁済については、便宜上、清算期間の経過した昭和五六年八月一五日を基準日として本件不動産の価額とYの債権額とを比較した結果、清算金が存在すると判断している。
【判旨】
右事実<編注【説明】に記載した事実>によれば、控訴人と大邦不動産は人格的に同一と評すべきところ、控訴人は、昭和五六年二月二三日、自ら本件代物弁済予約の予約完結権行使の意思表示をし、また、実体的にも、控訴人において、同年六月一五日右不動産につき清算金が存在しない旨の通知をし、被控訴人において、右所有権及び同登記の控訴人への移転を追認したものと認めることができる。<中略>
2 ところで、仮登記担保契約に関する法律第二条は、仮登記担保契約が土地又は建物の所有権移転を目的とするものである場合には、予約完結の意思表示の日以後に債権者が清算金の見積額(清算金がないと認めるときはその旨)を債務者等に通知し、かつ、通知が債務者等に到達した日から二月を経過しなければ所有権移転の効力が生じないものとしているが、右法条の趣旨は、債権者に不当な利益を得しめず債務者等の保護を目的とするものであるから、本件のように、予約完結権行使の意思表示がなされ、同時に当該不動産につき所有権移転登記が経由された後ではあるけれども、変則的ながら、控訴人から被控訴人に対し清算金が存しない旨の通知がなされ、その清算期間の二か月も経過し、しかも、債務者である被控訴人が一旦は右不動産所有権移転の効力を争い右登記の抹消を求める訴えを提起したがその後同手続においてこれを変更し、右予約完結権行使による所有権移転を追認し、これによる清算金の支払いを求めるに至つた場合には、あえて右債務者たる被控訴人の意思に反してまで右追認による所有権移転の効力を否定する理由はなく、むしろ、右追認を清算期間経過後における処分行為とし、右追認により、清算金の支払いをまたずに、右清算期間経過時に生じた所有権移転の効力が、右予約完結権行使の意思表示のなされたときに遡つて生じ、同時に、被担保債権が消滅すると解するのが相当である。
(田坂友男 稲垣喬 島田清次郎)